北里中央執行委員長より2024年新春のご挨拶。

新年あけましておめでとうございます。

発生から4年が経過し、季節性インフルエンザと同等に格下げされた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は未だ変異を繰り返し感染者を出し続けてはおりますが、発生当初に比べ重症化リスクも大幅に軽減されたことから世界各国では行動制限の解除とともに経済活動も回復に向かっています。

一方でおおよそ2年が経過したロシアによるウクライナ侵攻は、未だ収束の見込みがないまま世界各国の経済に大きな影響を与え続けており、原油(エネルギー)価格の高騰に起因する様々な物価上昇で未だに私たちの生活の回復に影を落としている状況です。

また、昨年11月に開始されたイスラム原理主義組織「ハマス」によるイスラエル攻撃と応戦は、一般人を巻き込み、戦闘と休止を繰り返しながら今なお続いていますが、パレスチナへの欧米諸国の注意が集まる中でウクライナへの支援が弱まり、イスラエルの地上侵攻による反撃で多くの犠牲者が生まれたことによって支援する米国にも国際社会の批判が出始めるなど世界から孤立し始めているロシア・プーチン大統領にとって“追い風”とも言われる状況となっており、自国への経済制裁軽減とウクライナ政権の弱体化を見込むロシアの権威回復のカギとも言われています。

国内では、就任から3年目となる岸田首相が長引く物価高騰への対策と衆議院解散を目論み昨年秋に発した経済対策が「財源の当てもない愚策」と評され、昨年後半から過去最低の支持率を更新し続けるなど政権崩壊の危機に瀕していますが、打ち出した所得税減税などの対策が海外では評価されず、円安が解消できないばかりか既に社会保障面での負担増や増税を強いる政策に国民感情も悪化の一途を辿るなど負のスパイラルに陥っています。

また、防衛費を大幅に拡大し、今春にも米国から国賓待遇での招待を受けるなどもはや「米国依存」を続ける“家来・子分”と揶揄されており、自民党内の政治資金不適切処理問題の拡大などのリスクと併せ、政権運営の舵取りも極めて厳しい状況が続くと見られていますので、私たちの生活の回復を最優先とした実効性ある取り組みが行われなければ国民の信頼回復も遠く望めない状況となっています。

このような環境のもと、私たちの従事するハイタク・バス産業では全産業共通の問題となっている「労働力不足」が特に深刻化しています。全国的な乗務員不足によって稼働率が低下し、需給バランスが崩れ、過疎地だけでなく都市部でも事業存続が困難となり統廃合や廃業せざるを得ない企業が多く発生するなど業界全体の規模縮小が大きな問題の一つとなっています。

こうした中で昨年8月、菅義偉前首相の「全国各地で観光客や移動困難者が多発している。地域経済の損失も大きく、一刻も早く全国で導入が必要」という発言をきっかけに「ライドシェア」について様々な方面で急激に動き始めることになりました。とりわけ全国の自治体からはインバウンドの回復により急激に増加している観光客の送迎や高齢者などの移動困難者の解消を目指して導入要請の声が多く上がり、全国に先行する形で菅前首相の地盤である神奈川県の知事が「神奈川版ライドシェア」と銘打ち、同じく地元である小泉進次郎衆議院議員の声掛けによって三浦市で実証実験を行うべく、国と自治体が連動しながら道交法の改正も含めて進んでいます。

また、私たちの業界に余りにも大きな影響のあるこの「ライドシェア導入」についてはこうした状況を知ってか知らずか、2014年の上陸から既に10年が経過した「Uber(ウーバー)」も当初は“一種免許による有償旅客輸送”を試みるも「白タク」と同一視され、当然ですが安全性などの問題から広まらず今日まで苦戦を強いられてきましたが、奇しくもコロナによる「Uber Eats(ウーバー・イーツ)」の成功によって社会的認知度も大きく上がったことから、既に世界各国で展開している強みを持っているアプリ事業者として “物”ではなく“人”を運ぶ「ライドシェア」解禁の波に乗って再び日本で浮上の機会を狙い、活発に活動していますので注視が必要です。

一方、「規制改革」を旗印に政策を進めている岸田首相は地元広島で県タクシー協会の顧問に名を連ねる立場にありながらも過激なライドシェア推進派でもある河野デジタル大臣を「ライドシェア」検討の担当に据えるなど、支持率が低下し続けている現政権内の混乱と危機が垣間見られる状況です。

この「ライドシェア」はタクシーをはじめとした二種免許による乗客の輸送ではなく、普通免許の一般ドライバーが乗客を有償で輸送するものですが、諸外国では性犯罪や重大事故・事件が多発し、現在ではアメリカと中国を除くほとんどの先進国が「ライドシェア」を禁止または制限しているにも関わらず、アプリを介して利益を生み出すIT関連事業者とその宣伝を任された一部の政治家や有識者と称する人物たちがこうした情報をひた隠しにしてTVや新聞紙上で「世の中に100%の安全などない」「世界に後れを取っているのはタクシー業界のせいだ」と都市部の渋滞や治安の悪化、社会問題化している非正規労働者の増大を招く危険を見て見ぬ振りし、国民の安全を度外視した「自己責任社会」を押し付けようと企んでいます。

このようにさまざま大きな問題のある政策でありながら「自分たちの利益のためなら何でもあり」の企業が莫大な資本力で力のある政治家を動かし、何が何でも自分たちの都合に合せて法改正まで企む今の社会は非常に不安定で、我々の生活を脅かす恐れのあるこの問題に対して同じ業界の労働組合の仲間や事業者とともに長年培ってきた日本の「安全文化」とその上で成り立つ「二種免許の価値」、そして現政権の「利権政治」に対して声を上げていかなければならないと考えています。

最後になりますが、新たな2024年はこの業界だけでなく国際グループ並びに国際労働組合にとって大変重要な1年になることは間違いありません。社会の変化に対応しつつ、業界をリードする企業と業界最大の労働組合として労使で様々な問題に立ち向かい、社会に選ばれ続ける“ブランド”を堅持していかなければなりません。そのためには国際労働組合の5,600名を超える組合員一人一人が交通産業の担い手としてコンプライアンスを柱とした社会的責任を果たしていく覚悟と自らの仕事に対する誇りを持ち続ける必要があります。

進化の早い社会の中でも「人にしかできないもの」を追求し、引き続き「高付加価値の労働力集団」としてここに集い、結束力を高めて“正しい道”を進んで行くことが私たちの目的である労働環境の向上と社会的地位の向上に繋がると信じて組合運動を進めて参りますので、改めて組合員各位並びにご家族のご理解とご協力をお願いする次第です。

末筆ながら関係する全ての皆さまのご健勝とご家族のご多幸を心より祈念申し上げ、新年のあいさつとさせていただきます。

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