北里中央執行委員長より2020年新春のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。

 

元号が「令和」となった2019年は台風と大雨が原因となり、かつて無い規模の災害が発生し多くの尊い人命が奪われ、生活圏が大きく破壊されるなど温暖化による気候変動の影響が日本国内にも広がりを見せました。改めてお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともにご遺族と被災された方々にお見舞い申し上げ、一日も早い復興を願っています。

新たに迎えた2020年ですが、世界の情勢を見ますと就任以来独自路線を貫き11月の大統領選挙で再選を目指す米国トランプ大統領は、好調な国内景気や雇用環境を背景に自身の経済政策の成果を強調していますが、米中貿易摩擦や中東・ロシアなどの外交問題の悪化、側近解任が続く共和党内の混乱やウクライナ問題に端を発した米国史上4人目となる大統領の弾劾調査など、数々の問題を抱えています。

とりわけ米国にとってもトランプ大統領自身にとっても最大の懸案事項である米中貿易交渉の最終局面を前に、香港民主化デモを支持し米国上下両院が圧倒的多数で可決した「香港人権・民主主義法案」を署名成立させたことで中国政府が「内政干渉」と激しく反論し、報復措置を表明したことから緊張感が増す中での交渉妥結を目指さなければならないという難しい局面に立たされ、世界経済への影響が極めて深刻なこの“覇権争い”に全世界が注目しており、予断を許さない状況となっています。

また日本国内では、昨年10月の消費税率引上げの経済に与える反動が軽減税率導入や教育・保育の無償化などの対策によって想定より少なく、内需の堅調さや個人消費の安定、雇用環境改善等によって国内経済は安定していると見られていますが、一方で先行きを見ると全く影響力の及ばない「米中貿易戦争」の行方に左右されるという極めて不安定な“受け身”の状況を強いられています。

隣国韓国との関係においても混迷する歴史問題に加え、「親中離米」の外交方針をとる文在寅政権によって米国を含めた三国関係の緊張度が高まっており、軍事協定を巡って日韓両国に対するトランプ大統領の米軍駐留経費負担増額要求など、安倍政権の慎重かつ的確な外交手腕が一層問われる状況となっています。

また安倍首相が就任以来謳ってきた「デフレ脱却」が成果に結びつかず、「成長と分配の好循環」には程遠い、実感のない経済政策に対しても国民の不満は増幅しており、そうした中で「森友・加計問題」に始まり、「閣僚の失言・スキャンダル」、「文書改ざん」などその全てがあいまいなまま、主要閣僚の辞任が続き新たな年を迎えましたが、昨年末から野党が追及を強める「桜を見る会」問題は“安倍政権終焉の始まり”とまで言われ、これまで高支持率と安定議席によって近代史上最長の政権を維持してきた安倍内閣最大の危機となっています。

このように国内の政治や経済が不安定な状況下、我々が従事する旅客自動車産業においても国策による「AIの積極活用」、「キャッシュレス化」や「インバウンド対策」、業界が進める「活性化策」などめまぐるしい速さで変化を余儀なくされており、労働力確保や設備投資などの先行投資も含め、この産業にとっては険しい道が続いています。

特に「インバウンド対策」と称し、規制緩和推進派が強烈に推し進める「ライドシェア新法」については業界の主要産別労働組合が結集し、その実情を社会に発信してきたことでここまで一定限の歯止めを掛けてきましたが、すでに巨額の投資を終えている業界外の巨大資本や外国人経営者は「プラットフォーマー」としてこの業界への流入を諦めてはおらず、その法律制定を見据えてタクシー事業だけでなく、ハイヤー事業やバス事業にまで様々な形で浸食し始めており、今後もハイタク・バスの労働組合としての力を集め、利用者の安心安全と我々の市場、職場を守る取り組みをしていかなければなりません。

しかしながら人口減少による労働力の減少や働き方改革を背景とした“省力化”がもたらすこうした時代の変化や技術革新には逆らうことは不可能であり、業界を挙げた「既得権の保護」だけを謳っていても社会から取り残されてしまう状況です。

むしろ「いかに迅速に流れを掴み、新しい時代に向けて柔軟に変化していくか」という視点を持たなければなりません。

こうした変化の激しい時代にあって我々が従事する国際自動車は、業界を代表する企業の一つとして産業の存続・発展と自社の永続的発展に向けて様々な挑戦をしています。

労働力確保の面ではこの業界の長い歴史の中で実現不可能といわれた「学卒者」の採用や女性乗務社員の積極採用が企業経営の根幹をなす稼働向上の面において同業他社に無い大きな成果を上げています。

また、決済システム構築が各企業にとって大きな負担となる「国民総キャッシュレス化」の政策においても日本を代表する企業「SONY」との共同会社「みんなのタクシー」による“S-RIDE”が着実に成長しており、需要の拡大や労働者の負担軽減による省力化に貢献してきています。今後もAIによる需要予測や事故形態の分析による生産効率向上を目指し、一方で新しい交通社会の形と言われる“MaaS”についても国際自動車独自のアプリ“フルクル”を通じてJR東日本との実証実験が着実に進んでいます。

しかしながら、こうした様々な施策においてもハイヤー・タクシー・バス・内勤・整備すべての組合員一人一人の理解と「kmブランド」に対する強い気持ちが無ければ、どれも成果には結びつけることができません。変化が激しく、厳しい局面だからこそ目指すべき未来を共有し全組合員が結束することが最も大切だと考えています。

ハイタク・バス産業が事業の収益構造や労働者の働き方まで変化を余儀なくされる中で、これまでこの業界において「既成概念や古い慣習に囚われない柔軟な組織」を目指した国際労働組合の組合員が「高付加価値の労働力集団」として社会から信頼されるブランドを築いてきた誇りと高い倫理観を維持しながら、時代の変化に立ち向かい、見え始めてきた“未来の交通社会”においても「kmブランド」が常に選ばれる存在であり続けるように進んでいかなければならないと考えています。

国際労働組合は、不安定で不確実なこの業界において最大規模の労働組合としての社会的責任の達成と業界の発展に注力することはもとより、我々組合員で綿々と築き上げてきた「kmブランド」の更なる向上こそが“未来への柱”と捉え、労働組合の持つ「要求・チェック・共済」機能を発揮しながら全組合員で団結し、労働者の明るい未来と生活を守るため、持続性のある取り組みをして参りたいと考えております。

本年もより一層のご理解、ご協力をお願い申し上げますとともに、末筆ながら関係する全ての皆様のご健勝とご家族のご多幸を心より祈念申し上げ、新年のあいさつとさせていただきます。

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