2024年のテーマ


日本国内では今年5月に感染症法上の「2類相当」から所謂「インフルエンザ」と同等の「5類感染症」となった新型コロナウイルスが、“格下げ”とはいえ6月以降も次々と変異を繰り返し、“第9波”と言われだすなど未だ感染者数が増加しているだけでなく、米国など世界各国でも8月にかけては入院者数とともにその数を増加させている。

また、9月に入り感染者数こそ落ち着きを見せてはいるものの、国内では季節性インフルエンザとの同時流行によって、年末にかけては引き続き注意が必要な状況が続いている。

約3年半にわたり猛威を振るってきたコロナも「5類」となり、世界各国では社会経済活動も正常化に向かって活発化しており、経済の回復に期待が寄せられてはいるものの、いち早く「非常事態の解除」に踏み切った米国以外の先進国ではこの間の傷跡は思いのほか深く、回復に今しばらく時間を要すると予測されている。

加えて、世界的な物価高騰の要因の一つと言われるロシアのウクライナ侵攻も1年半が経過した現在でも終息には向かっておらず、景気の回復に未だ大きな影を落としている。

日本でも半導体など部品供給制約の緩和を受けた自動車産業を中心に「輸出」が順調に回復している反面、長引く物価高騰を背景とした個人消費の伸び悩みが国内経済回復の鈍化の一因となっている。

一方、コロナ前の2019年には年間959万人、1兆7,000億円以上といわれる訪日外国人旅行者全体の消費額の3分の1以上を占めていた中国は、他国に遅れながらも8月に日本への団体旅行を解禁するなど、消費額とともに旅行需要が4年ぶりに「大きく回復する」と期待されていたものの、福島第一原発の処理水海洋放出を受け、中国は「安全性が担保できない」と科学的根拠のない反対運動を展開していることで、中国からの訪日旅行のキャンセルが相次ぐなど、インバウンド需要の回復に影を落としている。

9月に入り第2次改造内閣の発足を受け会見した岸田首相は、就任から2年の「様々な成果」を自ら主張し、長引く物価高の解消に向けても早急な経済対策の実行に向けた補正予算の編成を指示する考えを示したものの、我々国民にとっては「劣化する年金問題」、「国民健康保険の保険料増額」、「社会保険料の負担増」、「雇用保険料の引上げ」などに加え、“ステルス増税”とも言われる「インボイス制度」の導入が国民への負担増となるなかで、「経済立て直し」が最優先の渦中に30兆円以上と言われる外交での“バラマキ”や防衛費の増額といった国民の理解が得られないままでの諸施策を推進し、この間「一切の減税無し」という状況で国民生活の回復が遅れており、支持率も低下している。また、「衆議院解散」については「経済対策による景気や賃上げの動向によって」と具体的時期にこそ言及してはいないものの、口にした「今日より明日」には程遠い環境に国民感情は“冷え切っている”と言わざるを得ず、民意に応える政策の実現は期待できない状況となっている。

この様な状況下、我々の従事する旅客自動車産業では昨年後半から社会経済活動とインバウンド需要の回復によって徐々に市場が活発となり、コロナ前に戻りつつあるなか、とりわけタクシー産業では全国規模で運賃の改定が進み、乗務員の収入面が徐々に回復している一方で、コロナによる業界離れの後遺症から全国的な乗務員不足となり、物価高を背景にこれまで以上の採用コスト高騰によって各企業の収益が伸び悩む厳しい状況となっている。さらには、乗務員不足から一部の地域と一部の時間帯によってはタクシーが捕まりにくくなっていることで公共交通機関であるタクシーが「不足している」と社会に印象付けられ、コロナ禍で下火となっていた“ライドシェア”の推進論者が公共の場で無責任な発言を繰り返すという、我々業界に従事する労働者にとって非常に危険な状況が散見される事態となっている。

国際グループは、業界を代表するブランドとして採用面での強化はもちろん、労働環境の整備に注力するとともに“社員第一主義”を謳う企業として「社員の健康」と「健全な職場の確保」に向けて様々な取り組み・改革を実行している。

しかしながら、2024年4月の「働き方改革」の“総仕上げ”と言われる総労働時間短縮の期限を前にこれまで100年以上続けてきた「商慣習」にハッキリと区切りを付けなければならない状況を迎えており、具体性のある取り組み・改革の実現が社会における「生き残り」の鍵となっている。

さらに、これまで「労働時間」という点で他産業に比して「猶予」のあった旅客自動車産業でも厚生労働省が最終目標として既に掲げている「全産業・残業720時間以内」をしっかりと自覚した“方向転換”が迫られていることを企業のみならず、関わる全ての労働者が自覚しなければ必要な取り組み・改革は到底実現できない状況となっている。

国際労働組合は、戦後100年足らずの歴史の中で社会はもとより、「人」の価値観が大きく変わり、企業同様に「人」で構成される労働組合の運動も既得権や古い慣習に縛られていては、「前進」するどころか社会から置き去りにされる大きな転換期に来ていることを自覚するとともに、改めて「労働組合」の存在意義、理念、目的といったものの全てを「見直す必要に迫られている」と言っても過言ではない。同時に「労働時間を短縮し、豊かな人生を構築する」という視点を持ち、単純に「賃金を上げる」ことだけに拘泥していては、本来の目的には到達できない時代に突入していることを全組合員で共有しなければならない。

よって、我々組合員自身で築き上げてきた“kmブランド”の更なる価値向上への取り組みと多くの組合員の理解の下で継続してきた運動の基本である「社会を支える仕事に対する誇りと高い技能・見識による高付加価値の労働力集団」を堅持し、「働きがいのある職場」を目指す取り組みの推進によって我々の生活を守りつつ、どのような社会情勢にあっても企業に対する“ゆるぎない拮抗力”を堅持するため、組織としての力をより強固なものにしていかなければならない。

したがって、国際労働組合5,500名すべての組合員が2024アクションプランの目指すものを共有し、“kmブランド”と共に「変わる時代」に向けた活発な議論を願い、ここに提案する。