2023年のテーマ
依然として世界的な流行が続いている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2022年9月時点での全世界の累計感染者数約6億1,000万人、累計死亡者数は約650万人となっているものの、先進国を中心にワクチン接種が進んだこともあり世界全体の1週間当りの新規感染者数は減少してきている。しかしながら新型コロナウイルス感染症を巡る様々な影響は世界的に広がり続けており、情勢も経済も不安定な状況は今しばらく続くと見られている。
2022年2月24日にロシアのプーチン大統領が隣国ウクライナ東部の親ロシア派組織が名乗る「ドネツク・ルガンスク両共和国の独立を支援する」として“特別な軍事作戦”と称したウクライナへの侵攻を開始したものの、当初の「短期間で」と言う目論見が崩れ、両国の軍事的対立は半年が経過した現在でも続いており、ウクライナ市民の犠牲者は「5,000人」とも「10,000人以上」とも言われ、国外への避難民も1,100万人を超えたとされており、対するロシア側も「自国兵が約6,000人死亡した」と発表するなど、その実態は掴めないほど未だ混乱が続いている。
ロシアのウクライナ侵攻直後から国連やG7各国を中心とした西側諸国からウクライナへの支援とロシアに対する度重なる非難声明、輸出入の禁止と併せ国際的枠組みからの排除などの経済制裁が発動されてきたものの、資源を多く保有する大国ロシアのエネルギー関連への制裁対抗措置は各国経済に甚大な影響を及ぼしている。また、“一つの中国”実現に向け台湾への軍事的圧力を強める中国や安定したエネルギー資源を目指すインドなど親露国と言われる国も多く、西側諸国を中心とした様々な制裁をもってしてもロシアを国際社会から切り離すことが出来ないばかりか、ロシアのウクライナ侵攻の影響から世界的にエネルギー・資源・食料品などの価格高騰が続く厳しい状況となっている。
日本国内においては、歴史的なインフレを抑え込むために大幅な利上げにより金融引き締めを実施する米国と長引くコロナ禍において景気回復を下支えするための日銀による大規模な金融緩和の継続によって日米の金利差が拡大し、結果として円を売却して高金利で運用に有利なドルを買う動きが活発となったことから、急速な“円安”が進行しており、さらにはロシアによるウクライナ侵攻でエネルギーや食料品の価格が高騰するなど輸入物価を押し上げる“円安”は企業活動や家計に大打撃を与え続けている。
今後もウクライナ侵攻の情勢やコロナ感染症の動向による影響など、日本経済を巡る不確実性は極めて高くなっており、国内の物価は更に上昇するとの見方も多く、現在のような「物価上昇に賃金上昇が追い付かない」状況では今後の対応如何で経済回復ばかりか国民生活の安定も望めない厳しい状況も予測されている。
また、2021年9月1日に発足したデジタル庁は“社会全体のデジタル化”により国民生活の利便性を向上させ、誰一人取り残されることなく多様な幸せが実現できる社会の確立を目的としており、コロナ禍において人々の社会生活を支える“エッセンシャルワーク”として再認識された我々が従事する公共交通サービスの分野においても自動運転技術に加え、MaaS(Mobility as a Service)やオンデマンド交通などの発達により、デジタルを活用した新たなモビリティサービスが社会実装の段階に近づいているものも出始めており、将来に向けた「デジタル交通社会」実現を目指した取り組みは急速に進んでいる。
こうした環境のなかで国際グループは、旅客自動車運送事業を代表する企業として現在のコロナ対策に沿って企業存続と社員の生活の確保を最優先に様々な対策を講じているものの、長期化する感染症拡大の影響や世界情勢の影響による経済の混乱は収益を圧迫するのみならず企業基盤にも少なからず影響を及ぼしている。同時にこの産業でも“利用者利便”の名を借りて加速度的に進む“デジタル化”についても、「先行投資による経営上の負担増」と「他産業大資本の参入」によって先行きの不安と課題が多くなるなかで引き続き業界をリードしつつ、顧客ニーズを的確に取り込んだより効果的・効率的な進化が求められており、労使が一体となった生産性向上の施策推進は未来の交通社会の一翼を担うためにも必要不可欠な状況となっている。
国際労働組合は、感染症の影響が拭えない現在の状況にあっても組合員の「生活の回復」を第一に、生活の糧となる国際グループの事業存続と企業基盤の安定を見据えた施策に対し、業界を代表する労働組合としてこれまで長きにわたり多くの組合員の理解の下で継続してきた運動の基本である「社会を支える仕事に対する誇りと高い技能・見識による高付加価値の労働力集団」を堅持していく事がこの難局を乗り越えるためには最も重要と改めて認識し、「魅力ある職業」、「誇りある職場」を目指す取り組みの推進とともに企業に対する拮抗力を維持するため、“組織の力”をより強固なものにしていかなければならない。
したがって、国際労働組合5,400名すべての組合員が2023アクションプランの目指すものを共有し、“kmブランド”と共に「仲間とともに希望ある新たな時代へ」に向けた活発な議論を願い、ここに提案する。